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5.3.5. 対応のあるとき(フリードマンの順位検定)
2元配置分散分析では等分散性と正規性の仮定のもとに,少なくとも間隔尺度で測られたデータが検定の対象になります.
しかし,標本が非正規性であったり,因子での水準差がありすぎたり,あるいは離散量とか順位尺度のデータのときは,ここでのフリードマン(Friedman)の順位検定を用いると良いでしょう.

[一般形式]

[検定の手順] 1. 検定の問題を明かにする.
.....「対象とする要因間に有意な差があるか?」

2. 仮説の設定を行う.
.....帰無仮設(H0):μ1jμ2j=・・・=μnj
.....対立仮設(H1):μ1jμ2j≠・・・≠μnj.
.........................(両側検定になる)

3. 危険率(100α%)を設定する.
.....両側検定の有意水準:α

4. 検定統計量(Q)を計算する. 注釈表示
.....2つの要因からなる2因子のデータを,
.....n=標本(A)の行数
.....m=要因(B)の列数
.....j=各水準における順位の部分和(j=1,2,・・・,n)

とするとき,データの符号化と順位変換のために,データをひとまとめにして,各標本ごとに 表41 のよな昇順順位系列をつくります. 注釈表示

表41 昇順順位系列の一般記号
標本(A/B)12 ・・j・・m
11112・・1j・・1m
22122・・2j・・2m
ii1i2・・ij・・im
nn1n2・・nj・・n
順位部分和.1.2・・.j・・.m

次により,順位の平均値を求めます.
Sj=ΣRij/n

そして、分散を求めます.
V=ΣΣ(Rij−(m+1)/2)2

これにより,フリードマンの検定統計量(Q)は,
Q=n2*(n−1)/V *Σ(Sj−(m+1)/2)2

となります。

5. 統計的判定を行う.
Q<KAI2(m−1,α)ならば,「危険率100αで有意な差がない」
Q≧KAI2(m−1,α)ならば,「危険率100αで有意な差がある」

なお,KAI2(m-1,α)は 表計算ソフト「エクセル」)から求めると良いでしょう.
求め方は「例題」を参考にして下さい。

[例題29]
気管支喘息患者の病態別の血清IgE値が,表42 ように 10 ランクの点数で与えられているとき,フリードマンの順位検定によって, 病態間に有意な差があるかどうかを検定してみます.

表42 病態別の IgE 値
標本(A)/病態(B)アトピー型(B1)混合型(B2)感染型(B3)
A197 3
A2 10 63
A367 3
A45 6 3
A584 2
A672○2○

標本(A)は相異なる年齢ブロック因子に相当します。

検定は次の手順で行います.
標本(A6)に同一順位2が2ツ(○印)あるので,次のようにして順位平均を与えます.
2の順位平均=(1+2)/2=1.5

順位平均を与えた各標本ごとの順位系列は 表43 のよになります.

表43「例題29」(表42)の順位系列
標本(A)/病態(B)アトピー型(B1)混合型(B2)感染型(B3)
A13 2 1
A2 3 2 1
A3 2 3 1
A4231
A5 3 2 1
A63 1.51.5
順位部分和R=16 R=13.5 R=6.5

表43 から検定統計量(Q)を求めますが,計算は表計算ソフト「エクセル」を使うと便利でしょう。
ここでは,「エクセル」による計算過程を示します。

「関数式」による方法

フリードマンの検定統計量は
Q=8.4348

ここで,KAI2分布表から,
KAI2(m-1,α)=KAI2(2,0.05)=5.9915

であるので,

Q=8.4348>KAI2(2,0.05)=5.9915(両側検定,危険率 5%)

から,病態によって IgE に有意な差があると云えます.KAI2値は表計算ソフト「エクセル」の関数から求めます。

エクセル関数 CHIINT(0.05, 2)=5.9915

検定の結果,帰無仮説(H0)は棄却され「有意な差がある」との結果を得ました.しかし,どの要因間(列水準)に差があるかは分かりません。
どの要因間に差があるかは多重比較によって判断します.
「例題29」ではアトピー型(B1)と感染型(B3)の間にのみ有意差が認められました.

多重比較については,「5.3.3. 多群間の平均値を比較する」で説明しましたが,ここでもこれらを利用してた群間の比較が出来ます.

「注釈」
  1. 標本の数(n)がn≧9のとき,検定統計量の分布が KAI2 分布するので,ここでの検定統計量(Q)を用いることができる.
    n<9のとき,ここでの検定統計量(Q)を用いて検定できないので注意されたい。
  2. ここでの検定は要因(B)間の検定であり,標本(A)間の検定はできないので注意されたい.
  3. データの順位変換において,A群のデータに同じ順位のものがあるとき順位の平均をそのデータの順位とする.

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