私小説 新・ファミリーストーリー(病気をつきとめよ!)
(登場人物・場所などはすべて架空です)


(Web site より引用:免疫細胞)

 

"あらすじ"の音読

あらすじ(ファミリーストーリーから)

 向田久美(むこうだ くみ、75歳)の孫(向田淳平:むこうだ じゅんぺい、19歳)は、
ふと立ち寄った金座古書店(きんざ こしょてん)で何気なく買った古い統計学の本の著者(三名金作:さんな きんさく)が、お祖母ちゃん(久美)の父であり、
淳平の曽祖父(ひいじいちゃん)であることを知った。

(イメージした合成画像)

 そして、淳平は自分のヒストリーに興味を覚え、久美お祖母ちゃんの語る曽祖父が生きた昭和の平凡な一庶民の青春を知ることになった。
久美お祖母ちゃんがアトリエと呼ぶ台所の食器棚兼書棚には“永久保存”の札の貼ってある父の著書が数冊あり、その中に父の日記である革張りの手帳があった。
そこには、はからずも臨床検査技師として生きた父の生(本音)が書かれていた。

 昭和30年ころには、各県の衛生検査研究所で衛生検査を教えており、衛生検査技師(えいせいけんさぎし、英: Public Health Laboratory Technologist)
という国家資格ではなく、病院などの医療機関などにおいて医師の指示と指導のもとで種々の検査を行っていた。衛生検査の資質など関係なく、
誰れも衛生検査が出来たのである。
 向田久美の父である三名金作は自衛隊の衛生学校で衛生・臨床検査を学び、
各地の自衛隊地区病院で研鑽と経験をつんでいた。
 
自衛隊衛生学校は明治時代から続く歴史ある衛生学校であり、三名金作の在学時には「金原 節三(きんばら せつぞう、1901年11月3日~1976年10月29日」が
日本陸軍軍医から陸上自衛隊医官となり第三代陸上幕僚監部衛生監陸将がいた。
 

***
2005年5月2日、「臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第39号)」が公布され(平成18年4月1日施行)、   
衛生検査技師免許は廃止されることとなり、法律名称は「臨床検査技師等に関する法律」に変更された。   
臨床検査技師(以下、MTと略す)は、病院などの医療機関において種々の臨床検査を行う技術者である。日本においては、   
臨床検査技師等に関する法律により規定される国家資格である。
***

 

目次
・第1話:検尿 
Link
・第2話:尿沈査 Link
・第3話:検便とトキソプラズマ Link
・第4話:LE細胞 Link
・第5話:心電図: Link
・第6話:気管支喘息 その1: Link
・第7話:気管支喘息 その2 : Link
・第8話:ガス中毒     : Link
・第9話:向田家(終わり) : Link

    

私小説 新・ファミリーストーリー(1)
(病気をつきとめよ!)
(登場人物・場所などはすべて架空です)


(Web site より引用:免疫細胞)

 

第1話:検尿)
  僕(三名金作)が自衛隊を卒業(退官)し、初めて務めた民間病院には衛生検査技師の資格者は数人であり、
その有資格者も医師の証明による申請だけでの免許であり、検査は「臨床検査提要(金原出版)」(臨床検査技師のバイブル的な名著である)を見ながら
検査をおこなっていた。
自衛隊の衛生学校や地区病院などで臨床検査を本格的に学び経験したきた僕は、検査室のスタッフの指導から始める必要があった。
また、病院長からも検査スタッフの教育を依頼されていた。

その一例だが、
 
今でも外来・入院患者の多くは、受診時に採尿して尿検査を行うが、それほど検尿は健康のバロメータでもある。
ある時、僕は検査スタッフが行う検尿検査を見ていた。

 当時の検尿(pH、尿たんぱく、尿糖など)は採尿した検体(尿)を試験管に採るり、例えば、”尿たんぱく” なら試薬(ズルフォサリチルサン)を
入れて尿の混濁の強さから「-, +, ++, +++」として報告する。

担当のスタッフも尿検査をルーチン通りに行い、なんの疑いもなく「+++」と記した。

それを見ていた僕はスタッフに言った、「その試験管の尿をブンゼンで温めてみて・・」、スタッフは僕の言う通り試験管を火にかざし、
温めると白濁が”さあ~” と消えた。

三名(僕):
  尿蛋白が陽性の場合は、必ず、今のように火であぶって確認して下さい。

スタッフ:
  どうして強陽性の白濁が消えたのでしょうか・・?

三名(僕): 
「BJP (ベンスジョーンズ蛋白)」だと思うので「多発性骨髄腫」の疑いがあります、その様に担当医師に報告して下さい。

 この様に、僕は検査スタッフのルーチンを確認することから始めた。スタッフには「医師と共同で「病気をつきとめる」のが ”コ・メディカルである   
検査技師の役割だ・・」 と言った・・が、それは自衛隊の衛生学校で教わったことにすぎない。

***
現在は尿試験紙法だから、BJPは見つけにくいが、試薬(ズルフォサリチルサン)で陰性なら「尿たんぱく陰性」と言える。
***

  

第2話:尿沈査)
病気をつきとめよ(第2話:尿沈査
 尿検査ににおいて、異常が出たら尿沈渣(尿中に含まれる成分、白血球や赤血球など)の検査をおこなうことが推奨される。しかし、
検査は医師の指示のもとでしか行うことが出来ないなで、尿沈査の指示がなければ定性検査(pH、尿たんぱく、尿糖など)の結果だけを医師に報告し、
その結果を見て医師が必要と思ったら、あらためて尿沈査の追加検査がでるので、その間、外来患者は待たされることになる。患者のことを考えたら、
尿検査で異常が出たら、医師の指示をまたず尿沈査の検査をやったらどうかと思った。

 そこで、医局会議の場で検査スタッフの判断で尿沈査の検査が出来るように諮ったら、“それは良いことだ・・”との了解が得られた。
 こんな事があった、

スタッフ:
 この女性患者の尿沈渣のですが、白血球が沢山見られます・・・、尿路感染症でしょうか・・?

三名(僕):
ちょっと見せて下さい。


・・と言って、顕微鏡を覗くと、確かに白血球らしきものが沢山みられた、前から尿路感染症として抗生剤を飲んでいたが、一向に良くならないらしい・・とのことであった。

三名(僕):
 これは白血球ではないようですね・・、”膣トリコモナス” ですので、この患者さんは婦人科で診てもらうよう、看護婦(師)に伝えて下さい。

 “膣トリコモナス” が顕微鏡下で活発に動いていれば、白血球と簡単に区別出来るが、動いていなければ、白血球とほとんど区別出来ない。
しかし、経験を積むと、白血球との区別がつくようになるが難しい場合も多い。抗生剤が聞かないで女性なら“膣トリコモナス”を疑ってみるべきだと思った。


(膣トリコモナスのイメージ画像、Web site より引用)

  

病気をつきとめよ(第3話:検便とトキソプラズマ)
 昭和生まれの人なら経験があると思うが、
 小学生の頃、定期的に寄生卵検査があって学校にマッチ箱に”便”を入れて持って行った・・その日は教室が臭かった覚えがある。
 各県に「寄生虫予防協会」があって、児童・生徒の寄生虫卵の検査が行われていた。それほど寄生虫感染が多かったのは、
 当時の農業肥料として”糞尿”が使われていたからで、寄生
虫症として最も多かったのが ”回虫” や ”12指腸虫” などであり、
 国民病と言われたほどである。
 もちろん大人だって同じで、川魚(鮎など)を生食する人に多かったのが“横川吸虫”や “肝吸虫” などであった。
 また、子供では “蟯虫(ぎょう虫)” が多く、最近(2015年まで)“蟯虫卵”検査が学校で行われていた。


(蟯虫卵)

 当時の環境衛生事情は ”不潔” だったけど、”清潔” になるにつれてアトピー性疾患、例えば、スギ花粉症などが増えて来た。  すなわち、免疫抗体である血中IgE が高くなっってアレルギー性疾患が寄生虫(回虫)などにとって代わった様だ。

ある時、 
  眼科の医師から僕(三名金作)にすぐ来てほしいとの連絡があった・・、駆けとけると患者の左目の写真を見せられ・・、

眼科医:
 左目の眼球が真っ白で・・、ブドウ膜炎にかかっています。
 これからステロイドを眼球に注射しようと思いますが、原因が何かを知りたいので血液検査を至急してお願いしたいので、ご相談方々来てもらいました。

三名(僕):
 何かの抗体検査でしょうか・・?

眼科医:
  一応、通常の血液検査に”HIV” や ”梅毒”などの検査に加えて、「トキソプラウマ抗体」を大至急お願いしたいのですが如何でしょうか?

三名(僕):
  一般のルーチン検査や ”HIV、梅毒” なら1時間ほどで結果を出せますが、「トキソプラズマ抗体」は、どんなに急いでも2日はかかります。

眼科医:
  患者には、しばらく通院してもらう必要がありますので、なるべく早く検査結果が分かれば助かります。

この患者は、数日前に動物園に行ったとき、野良ネコが多くいて砂埃がしていたそうで、翌日、風邪の様な症状があって、
夜中に左目に違和感を感じ目を開けたら周りが真っ白だったと言う。 そして、当院の眼科に駆け付けたと言うことらしい。

 
翌々日、検査結果が出た、眼科医の診立ての通り「トキソプラズマ抗体」だけが異常に高く、「トキソプラズマによるブドウ膜炎」と診断された。

 ここで、この寄生虫 “トキソプラズ症”の話題のペーパー(論文)を以下に紹介しておこ。
***
 Fatal attraction in rats infected with Toxoplasma gondii.(M. Berdoy, etc.)

直訳すると、
「Toxoplasma gondiiに感染したラットの致死的誘引(危険な魅力)」

一部を紹介すると、 
 Here we report that, although rats have evolved anti-predator avoidance of areas with signs of cat presen
 
 T. gondii's manipulation appears to alter the rat's perception of cat predation risk,
 in some cases turning
    their innate aversion into an imprudent attraction.

つまり、
  ネズミは猫を避けるべきなのに、トキソプラズマに感染したネズミは猫に誘因・・、恐れなくなる?・・ってことらしい。

要するに、
   ネズミは猫を避けるべきなのに、トキソプラズマに感染したネズミは猫に誘因・・、恐れなくなる?・・ってことらしい。
 どう言う事かって・・、ネズミに寄生したトキソプラズマはシストのまま・・・、成虫になるには猫に感染しなければならない。
 そこで、トキソプラズマは猫を恐れなくコントロールするって訳だ。そう・・、トキソプラズマに支配されたネズミは猫に恋して、
 その身を捧げる危険な情事に落ち入るのだ。

  多くの人間もトキソプラズマ抗体を持っているようで、特に、"あおり運転"など、
ハンドルを握ると人格が変わってヤバクなる人にトキソプラズマ感染者が多いと言う「潜在性トキソプラズマ症の被験者における交通事故のリスク増加:遡及的症例対照試験」がある。

「注意」:あくまでも一論文の知見でり、この患者の場合、砂埃の中に野良猫の糞便が混じっていて、
 偶然、この患者の左目に入ったのかも知れない、多くのブドウ膜炎は原因不明のようである。ペットとして飼っている猫のすべてが危険と言うわけではない。

 

  

病気をつきとめよ(第4話:SLE 細胞)
 全身性エリテマトーデス(SLE)の特徴的な皮疹として、蝶形紅斑が顔面に現れることがあり、 この当時、確定診断のためにLE 細胞の検出が一つの決め手となっていた(現在はLE細胞陽性が診断基準から削除されている)。 このLE細胞は患者血液の白血球である好中球に貪食された均一無構造な紫紅色物質を見いだすことであるが、しかし血液の直接塗抹標本では認められない。

 そこで、採血した血液を試験管中に放置しておくと、血清と血餅に分離されるので、その血餅を乳鉢などですり潰したものをスライドガラスに塗って染色すると見つけることが出来る。

 この病気は、原因不明の全身性自己免疫疾患であり比較的に若い女性に多く、塗抹染色標本中に、このLE細胞を見つけたときは、 なんとも悲しい気持ちになるが、検査技師としては冷静に真実を医師に告げねばならない。

未経験の検査スタッフは、僕(三名金作)が血餅をすり潰している様子を見て、

検査スタッフ:
  血餅をすり潰して、何をしているのですか・・?

三名(僕):
 こうやって、すり潰したものを染色してLE細胞を探すのです・・、やり方をみていて下さい。この塗抹標本をメイ・ギムザ染色してくれますか・・。

検査スタッフ:
  染色が終わりましたので、標本を顕微鏡で観ましたが好中球しか見当たりません。

三名(僕):
  ちょっと僕にみせて下さい。ここに、好中球に貪食された細胞があります。これがLE細胞の可能性が強いと思います。確認して下さい。

この様に、
LE細胞テストの方法は簡便であり、また、診断の特異性が高いのでSLEの診断の有用である。このLE細胞の確認した医師は診断基準に基づき確定診断にいたるので、
このLE細胞を発見することはSLE診断にとって大切な検査となる。
  検査技師は、顕微鏡下のチョットした変化にも気を付けて観察し、わずかな白血球像の変化にも注意して観察すべきである。

 事実、多くの白血病などは血液像(白血球数、赤血球数、血小板数、血色素、ヘマットクロトなど)の異常から検査技師によって発見されることが多い。
この血液像に異常があれば、医師の指示を待つことなく、追加検査として染色して白血球などの形態に異常がないか調べてみることが大切である。
しかし、医師の指導・指示あるいは監督のもとに行なわれる臨床検査では、検査技師の判断だけで検査を行えば、色々と悶着がおこるかも知れない、
保険診療の範囲の逸脱や患者に余計な会計負担をかけるかも知れない。
日頃からの医師や事務(会計)などとの意思疎通が必要で、検査技師の独断はさけるべきであろう。現実、検査技師が医師の真似事をするとして、検査技師を毛嫌いする医師もいるのだ。

しかし、若い未経験な医師を育てるのもベテランの看護婦(師)や検査技師や放射線技師などである。

  

病気をつきとめよ(第5話:心電図)

  昔の心電計は真空管式だったので、よく故障もあったが、僕は電気・電子に通じており、心電計はアンプ回路と同じであるので自分で修理することも出来たし、
何よりも人体の体表面上からの心臓の電位を計測する仕組みも、よく理解することが出来た。
 
当時の臨床検査は生化学的な検査が主流で、人体の電気現象(心電図、脳波、筋電図など) は工学的な専門分野とみなされていた。したがって、
当時の衛生検査技師の試験には心電図などの試験が出題されることはなかった。
しかし、衛生検査技師が臨床検査技師に統一されようになって、電気・電子工学の講習の受講を受けることが臨床検査技師の受験の条件となった。
  各県の衛生検査技師会において、電気・電子工学の講習が実施されることになって、僕に講習実施をどの様にすべきか・・、
また、講師はどうすれば良いのか・・などの相談があった。幸い、僕には大学の電気科で先生をしている同級生がおり、その紹介で、その大学の教授と相談して、
国家試験のために必要な講義を依頼することが出来た。
そして、臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第39号)」が公布され臨床検査技師が国家資格となり、
心電図、脳波、筋電図などの検査が出来るようになった。
 
今でも、心電図検査は四肢と胸部に電極をつけた12誘導心電図で、12の心電図、
すなわち、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、aVR・aVL・aVF、V1・V2・V3・V4・V5・V6 の心電図波形から心臓の電位変化を捉え、心臓に異常がないかを判断するのである。
したがって、電極を正しく装着する必要がある。


(Web site より引用)

 
ある時、僕が心電図室に入るのと入れ違いに心電図を撮り終えた患者とすれちがった。その患者の心電図のコピーがあったので、何気なく見ると、
どうも波形がオカシイ・・、

三名(僕): 
  この心電図のコピーは、今の患者さんのものですか・・?

スタッフ: そうですが・・? 

三名(僕): よく見せて下さい。

スタッフ:
  何かオカシイところが有りますか・・?

三名(僕):
  これは、四肢電極を付け間違っていませんか・・、電極が左側と右側を逆に付けていませんか・・?

スタッフ:
  そんな事はないと思いますが・・。

スタッフは少々 “むくれる(ふてくされる)” ような顔をしたが・・、

三名(僕):
  すぐに、診察室に行って、担当の医師に撮り直しの許可を得て下さい、患者には、念のためにと丁寧にお願いして下さい。

スタッフはしぶしぶ “はい・・分かりました” と言ったが、“むくれ" ていた。

僕が見守る中、正しい位置に電極を着けて心電図を取り直すと、やはり左右の電極を付け間違えていた。
スッフは、バツが悪そうに僕に謝ったが・・" 担当した医師は、患者に正常な心電図だと言っていましたよ・・、 三名技師長さんはチラッと見ただけで間違いだとよく分かりましたね“ と言ったが、
その昔、僕にも電極のつけ 間違いがあって、その時の失敗の経験から学んだものである。

当時、心電図を詳しく判読出来る医師は専門医くらいであり、詳しい心電図の判読は専門医に回されていたくらいである。
そこで、僕は近隣病院の検査技師や看護婦(師)を対象に心電図判読の講習会を開いたが、
うわさとなって医師も参加もするようになった。
後に、“若年者心臓病対策協議会” が出来て、学童・
生徒の心電図検診が行われるようになった。
僕を班長としたグループが各学校に出向いて学童・生徒の心電図検診を始めた。しかし、校医や医師会からは、当然のように強い反発があったものの、
応援してくれる有力な医師もおり、心電図の判読には専門医の確認と校医の許可を得ることなどで決着した。

 

 


(Web site より引用)

  

病気をつきとめよ(第6話:気管支喘息 その1)
気管支喘息患者の多くは血中IgE が高い・・が、慢性化すると難治性になって呼吸困難な状態が続き、日常生活に支障きたすようになる。 高齢者では感染型気管支喘息や咳喘息が悪化して“慢性気管支喘息”になることもある。

ここでは、IgE型(アレルギー型)の気管支喘息について、僕(三名金作)の知見を紹介する。


気管支喘息は、肺機能的には“閉塞性疾患”であり、X線像だけでなく肺機能検査のフローボリューム検査を行えば、そのパターンから判断できる。
喘息など閉塞性疾患の典型的なパターンは下図のように、点線より下に凹の下降曲線を描く。



(フローボリューム曲線の模式図)

この検査は患者にとってシンドイ・・、と言うのは、ただでさえ呼吸が困難な患者に検査スタッフが・・・
 「吸って・・吐いて・・、もっと吐いて・・と、患者に努力させるからで、努力性肺活量とも言う。
どうしても、上手に出来ない患者は仕方ないが、肺活量の正確な情報を把握するためには、患者に呼吸の方法を教え、 何回か練習してから実施することになる。


(We site より引用)

  当初、男性のスタッフが肺機能検査をおこなっていたが、どうも男性の「もっと吐いて・・もっと・・」と患者への努力を強いる声が患者をイジメているように聞こえる。
そこで、女性のスタッフに変えてみたら優しく聞こえ患者の評判も良かった。女性のスタッフはフローボリューム検査の前に、おもちゃの風船を膨らませる練習をして、 Nbr>患者を和ませるなどの工夫をしていた。
  気管支喘息は気管支が閉塞して呼吸困難になる。慢性化して呼吸の困難さに慣れると、喘息発作の兆候が鈍感となり、気管切開に至る場合もある。 喘息患者の多くは血中の好酸球や好塩基球の数が増ていることに僕(三名金作)は気づいた。

  

病気をつきとめよ(第7話:喘息 その2)

  アレルギー型の気管支喘息患者の多くは血中のIgEが高いことが知られているが、このIgEに先行して血中の白血球である好酸球と好塩基球が増えることが分かった。
好酸球と好塩基球の数はスライドガラスに少量の血液を薄く塗り染色して顕微鏡下で数えるので時間がかかる。
そこで僕(三名金作)は患者の耳朶血(耳たぶから少量の血液を採取)から、メランジュール(白血球数や赤血球数を調べる器具:下図)を使い、好酸球と好塩基球を染色することを思いついた。


(血球計測器:メランジュール)

 そして、喘息患者の”好酸球と好塩基球” の数を数えていると、喘息発作の前にこの白血球数が増加し、
数日後にIgE も上昇することが分かった。そのメカリズムは諸説あるが、発作の予兆を捉えることに役立つなら、発作の前に気管支拡張剤などの投与など予防的な
処置が可能とならないか・・・、僕は毎日入院中の喘息患者の了解を得て微量の耳朶血を採って ”好酸球数と好塩基球数”を計測することにした。
そして、増加の見られた患者に気管支拡張剤の吸引や薬剤の投与によって、多くの患者の発作を抑制・軽減することができ、
統計学的な検定でも有効であることが証明された。その後の研究で、今では専門医の指導による予防的な薬剤投与の有効性が認められている。
 
また、液体クロマトグラフィーを導入し、患者一人一人の気管支拡張剤などの血中濃度から投薬の適正量を把握し治療のための情報を提供した。
  一方、夏休みには、喘息患児のためのサマーキャップを開き、森林浴などでリラックスさせ自律神経を整える生活を体験させたり、また、成人には音楽療法も採用して呼吸筋の強化などセルフメディケーションに取り組んだ。
  気管支喘息はアレルギー型・感染型・混合型に大きく分けられるが、その昔、”春かぜ”と呼ばれていた”スギ花粉症” の色々な症状も IgE によるアレルギー反応である。
そこで、僕(三名金作) は空中に飛散するスギ花粉を採取し、顕微鏡下で花粉の量を観測することを、毎年の春先に始めた。


 空中浮遊飛散スギ花粉の観測は、検査科のスタッフから大不評をかったし、医師からもスギ花粉を観測して治療の役に立つのかとか・・色々と言われたが、
地元の国立大学医学部の耳鼻科の准教授から、全県で観測する組織を作ってはどうかとの相談が寄せられた。
准教授などの尽力もあって有志によるスギ花粉の観測が始まり、県下のスギ花粉飛散数と翌日の飛散を予測出来るようになり、地元のTV局の取材を受けて、
天気予報の時間帯に “明日のスギ花粉は多くなるでしょう” などとスギ花粉注意報が出されるようになった。

 

病気をつきとめよ(第8話:ガス中毒)


(Web page より引用)

 

  1995年(平成7年)の地下鉄サリン事件から間もないころに、工事作業中の作業員6人が意識不明との救急電話が入った。
サリン事件からまもないことから“すわ”事件かと色めき立った。当院には3名の意識不明者が搬送されて来た。救急医から脳波測定の指示があった。

検査スタッフ:
 脳波が出ません・・・?
三名(僕):
 脳波計のゲイン(増幅)を最高にして・・。

検査スタッフ: 
 はい・・、わずかに脳波が見られます・・。
三名(僕):
 そのまま、脳波を録り続けて下さい・・。

作業現場の様子から、“ガス中毒“と思われたが、何のガスかは分からない・・、一酸化CO、硫化水素、青酸性(シアン)物質など、いろいろ考えられが、
特定する分析機器が地元の大学病院にもないと言う。

救急医:
 三名技師長は自衛隊の衛生学校出ですね・・、ガス中毒の経験はありませんか・・?

三名(僕):
  確か・・、東京に“ガス中毒センター” があったと思いますが・・?

救急医は早速、“ガス中毒センター”に電話したが、一向に繋がらない・・、後で分かったことだが、担当者は居らず電話だけが置いてあったらしい?

そこで僕(三名金作)は、自衛隊衛生学校時代にお世話になった“生物化学防護隊”に電話してみた。すると運よく隊長が在籍しているとのこと・・、

三名(僕):
  先生・・ご無沙汰しております。
隊長:
 おおー、金作か・・、どうしておる?

三名(僕):
  先生、実は“かくかくしかじか”でと、挨拶もそこそこに手短に今の状況を伝え、対処方法などを尋ねた。
隊長:
  分かった・・担当の医者と代わってくれ・・、金作は用手法(手仕事)でガスの特定を急ぎなさい、
  簡易方法を衛生学校で教えた筈だぞ・・!
三名(僕):
  はい分かりました・・、担当医と代わります。

担当の救急医との電話の後で、

救急医:
 解毒作用は確認されていないそうだが、”〇〇マグネシウム” の静脈注射を試す価値がありそうですので、すぐにやってみましょう。

そして、意識不明の3名に静脈注射を行ったところ、脳波がハッキリと見られるようになり意識が戻った。治療に当たっていた医師・看護婦(師)・検査技師など医療スタッフから歓声があがった。

 その頃、TVニュースで別の病院に搬送された患者の現況について記者会見する様子が放映され重篤な”肺水腫” だと言っていた。
たった1本の静脈注射で生死を分けたのだ・・、この事は県議会で与党の議員から衛生局長に、ガス検査装置の不備が質された。
この議員は、県議会での質問にあたり、僕(三名金作)に当時の実情を聞きに来ており、その事実をもとに議会で質疑に立ったのだ。
  この議員による質疑は地方紙(新聞)に取り上げられたが、議員の質問のあった翌日、僕に県庁の衛生局から電話があり、
「民間(私立)病院の一介(取るに足らない)の検査技師がどうして与党の有力議員に今回の事故のことを話したのか・・?、 
議員とはどういう関係か・・」と詰問された。さすがに、この詰問に僕は腹がたったので、議員会館に赴き質問者の議員に、この様な電話があったことを話した。
議員も怒った様子で卓上の電話をとり語気も強くどこかに電話すると、すぐに衛生局長と部長が飛んできて、部下の担当者の勝手な振る舞いだと議員に謝ったが、
立ち去る際に僕に一瞥(相手を軽蔑する)を投げて部屋を出た。 
  議員は僕に「誠にすみません・・、これが役人の実態ですよ」と言った。しかし、僕はこの県庁の役人が“官尊民卑”(官史を尊び民間人を軽視する)であることは、
すでに経験していた。それは、何年か前にタンカーによる重油流失事故があり、港湾内が重油で汚染されたときの事で、人工衛星の画像解析で港湾内を調査するために、 大学の准教授と一緒に県庁の港湾局に許諾を取りに行った時のことである。
名刺を差し出すと、担当者は「民間の方」(僕のこと)は廊下で待っている様に言われ、「先生はどうぞ部屋の中にお入り下さい」と丁寧な態度であった。

 数か月後、病院正面の車寄せ(駐車場)に数台の自衛隊のジープが止まった。そして、
出迎える病院長・医長・総看護婦(師)長・事務長の前にジープから降り立ったのは、“生物化学防護隊”の隊長(医官)だった。
僕にとっては恩師であり、隊長の肩章が眩しかった。


(イメージ画像)

 

私小説 新・ファミリーストーリー(終わり)
(登場人物・場所などはすべて架空です)

向田家の夕食の時である。
最初に、淳平がお祖母ちゃんである久美に問いかけた。

淳平:
お祖母ちゃん・・、”ひいじいちゃん”は、ずーと臨床検査技師だったん・・?

久美:
そうじゃよ・・、勤務先の病院は何度かかわったけど、仕事は臨床検査技師だけだったよ。

淳平:
じゃけんど・・、パソコンのAIで”三名金作”と検索したら“医師で統計学者”と出っとわ。

久美:
それは、AI のミスじゃわ・・、AI は膨大なデータベースから拾ってくるけん、無条件で鵜呑みにしちゃいけんよ。

淳平:
なんで ”ひいじいちゃん” を”医師・統計学者”と判断したんじゃろか・・?

久美:
それはじゃね、〇〇国立大学医学部の公衆衛生学部の客員だったけん、その情報がどっかに載っとたんじゃろう。

淳平:
ちょと僕も興味でてきたわ。

久美:
将来、”ひいじいちゃん” の本が役立つといいんじゃけどな。

淳平:
今はAI の時代じゃけん ”ひいじいちゃん”の本は古いかもしれん。

久美:
じゃけど、基本は変わらんのじやけん、きっといつか役に立つ時がくるじゃろう。そもそも、古本屋で “ひいじいちゃん”の本を見つけたのも、何かの因縁かも知れんけんね。

淳平の父親である”良彦”が言った。
良彦:
“淳平” は ”おばあちゃん” とは、よう喋るのう・・。

嫁の”奈々子”が言った。

奈々子:
淳平は ”おばあちゃんこ” じゃわね・・、共稼きじゃけん、小さい時から”おばあちゃん”といつも一緒だったけんね。


(イメージ画像)

新・ファミリーストーリー(完)